母平均とは
確率変数 \(X\) の理論上の平均(期待値)を、母平均(population mean)と呼びます。
\[
\mu = E[X]
\]

標本平均とは
得られた標本 \( x_1, x_2, \dots, x_n \) を元に、次のようにして計算される値を標本平均(sample mean)と呼びます。
\[
\bar{x} = \frac{1}{n}\sum_{i=1}^{n} x_i
\]
標本平均は、データの中心を表す最も自然な数値として、記述統計の立場で最初に定義されましたが、推測統計の用語としても用いられています。

母平均と標本平均の関係
母平均 \(\mu\) を持つ分布から独立に \(n\) 個の確率変数 \(X_1,\dots,X_n\) を取り出すとき、その標本平均を次のように定義します。
\[
\bar{X} = \frac{1}{n}\sum_{i=1}^{n} X_i
\]
標本平均の期待値は、期待値の線形性より次のように計算できます。
\[
E[\bar{X}]
= E\!\left[\frac{1}{n}\sum_{i=1}^{n} X_i\right]
= \frac{1}{n}\,E\!\left[\sum_{i=1}^{n} X_i\right]
= \frac{1}{n}\,\sum_{i=1}^{n} E[X_i]
\]
各 \(X_i\) は同じ分布に従うため \(E[X_i]=\mu\)。したがって、次のように変形できます。
\[
\frac{1}{n}\,\sum_{i=1}^{n} E[X_i]
= \frac{1}{n}\,(n\mu)
= \mu
\]
以上より、標本平均の期待値は母平均に等しいことが証明されます。[1]このような性質を「不偏性」と呼びます。
\[
E[\bar{X}] = \mu
\]
脚注
1 | このような性質を「不偏性」と呼びます。 |
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