数学・統計学

確率母関数

確率母関数とは

確率母関数(probability generating function; PGF)とは、非負整数値をとる離散型確率変数の確率や、期待値、分散などを生み出すことのできる関数です[1]文字通り「母なる関数」です。。確率変数 \( X \) に対して、次のように定義されます。

\[
G_X(s) = E[s^X] = \sum_{k=0}^{\infty} P(X=k)s^k
\]

確率変数と確率分布
確率変数とは確率変数(random variable)とは、確率的な事象の結果を数値として表すために定義された関数です。例えば「コインを1回投げる」という試行を考えます。確率変数 \( X \) を「表が出たら1、裏が出たら0」と定義すると...

名前は似ていますが、モーメント母関数とは別の関数です。

モーメント母関数
モーメント母関数とはモーメント母関数(moment generating function; MGF)モーメントを「積率」、モーメント母関数を「積率母関数」ともいいます。とは、確率変数の期待値や分散などを生み出すことのできる関数です文字通り...

確率母関数の一意性

確率母関数が \( s=1 \) の付近で存在すれば、確率母関数と対応する確率分布が一意に決まるという性質があります[2]非負整数値をとる確率変数について、確率母関数が一致すれば分布も一致します。

確率との関係

確率母関数を級数展開すると、次のようになります。

\[
G_X(s) = p_0 + p_1 s + p_2 s^2 + p_3 s^3 + \cdots
\]

ここで、各係数は実現値 \(X=k\) となる確率 \( p_k = P(X=k) \) です。次のようにして、係数を取り出すことができます。つまり、確率母関数から実現値 \(X=k\) となる確率を求めることができます。

\[
P(X=k) = p_k = \frac{1}{k!}G_X^{(k)}(0)
\]

階乗モーメントとの関係

確率母関数を \(s\) で \(n\) 回微分し、\(s=1\) を代入したものが、n次階乗モーメントです。

\[
E[X(X-1)\cdots(X-n+1)] = G_X^{(n)}(1)
\]

期待値との関係

期待値と階乗モーメントとは、次のような関係があります。

  • 確率変数 \( X \) の期待値=1次階乗モーメント:\( \;E[X] = G_X^{(1)}(1) \)
  • 確率変数 \( X^2 \) の期待値:\(\;E[X^2] = E[X(X-1)] + E[X] = G_X^{(2)}(1) + G_X^{(1)}(1)\)
期待値
期待値とは期待値(expected value)とは、確率変数の理論的な平均値を表します。離散型確率変数の期待値離散型確率変数 \( X \) がとりうる値を \( x \)、確率質量関数を \( p(x) = P(X = x) \) とす...

分散との関係

分散と階乗モーメントとは、次のような関係があります。

  • 確率変数 \( X \) の分散:
  • $$
    \begin{aligned}
    \;V[X] &= E[X^2]-(E[X])^2 \\
    &= E[X(X-1)] + E[X]-(E[X])^2 \\
    &= G_X^{(2)}(1) + G_X^{(1)}(1)-\bigl(G_X^{(1)}(1)\bigr)^2
    \end{aligned}
    $$

分散
分散とは分散(variance)とは、確率変数の値が期待値のまわりでどの程度ばらついているかを表す指標です。確率変数 \( X \) の分散は、次のように定義されます分散を \( \mathrm{Var}(X) \) と表す場合もあります。...

確率母関数の公式

  • 整数倍の変換: \( Y = cX \) のとき \( G_Y(s) = G_X(s^c) \)(\(c\) は非負整数)
  • 独立な確率変数の和: \( G_{X+Y}(s) = G_X(s) \cdot G_Y(s) \)

脚注

脚注
1 文字通り「母なる関数」です。
2 非負整数値をとる確率変数について、確率母関数が一致すれば分布も一致します。
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